2.「ビジネスと人権」における協働:
倫理的なリクルート(FERI)

「Fair and Ethical Recruitment Initiative(FERI)-公正で倫理的なリクルートイニシアティブ」とは、来日する技能実習生や特定技能労働者から、来日前の高額な費用を徴収しない『国際水準の移住労働者のリクルート』を促進するための民間主導の枠組みです。

外国人労働者のリクルートを取り巻く課題

出入国管理庁の報告書(2022)によれば、来日する技能実習生は、訪日前に平均54万円の手数料及び関連費用を支払っているとされています。JP-MIRAIの送出国でのヒアリングでは、今なお100万円以上支払ったケースも報告されています。​

倫理的なリクルート(FERI)

こうした費用は、現地の所得水準からは考えられない高額であり、日本で安心して働けない状況や、期待通りの収入が得られない場合、失踪につながるケースも報告されています。これは、下図のように構造的な問題であり、それぞれの生じる課題が負の連鎖を起こし、最も弱い立場にある外国人労働者に大きな負担を強いていることが原因です。さらに、その実態が十分に知られていないことも問題です。

倫理的なリクルート(FERI)

倫理的なリクルートに関して、各企業(雇用主)が問題を認識していても、個々の企業だけでは構造的な課題を改善することは困難です。この問題を解決するためには、一社や個人の取り組みだけでなく、関係者全体が協力し、連携して対応していくことが不可欠です。

JP-MIRAIの取組みの背景

JP-MIRAIは、2021年から技能実習生等の高額な訪日前手数料問題について、研究会や分科会を開催し、取り組みについて理解を深めてきました(※1)。2023年には、ベトナムでの制度構築(VJ-FERI)について、DOLAB、VAMAS、ILO、 JICA、JP-MIRAIの5者で合意しました。2024年2月現在、ベトナム、インドネシア、ネパールをはじめとしたアジアの他の送出国でも、FERIを展開して行く方針です。

FERIの基本的な枠組み

FERIは、送り出しに関わる①使用者(受入企業)、②斡旋機関(監理団体、登録支援機関)、③現地送出機関が、それぞれの「FERIガイドライン」(※2)に基づいて移住仲介機能を果たすことで、労働者が訪日前に手数料を払うことを防止します。

倫理的なリクルート(FERI)

FERIご利用の流れ(企業向け)

ご参加を希望の方は、以下の通り手続きを進めてください。

(1)こちらのFERI説明資料をお読みください。FERIの理念やフローをご確認ください。

(2)こちらのJP-MIRAI会員フォームより会員にお申し込みください。お申込みフォーム内で、FERIの参加を希望されている旨をご記載ください。既に会員の方は、直接事務局へお問い合わせください。

JP-MIRAI事務局:ask@camp.demoshop.cloud

FERIに関する3つの重要なポイント

(1)求人票の事前審査

企業求人票は、JP-MIRAI事務局と専門家(全国社労士会の協力)によって、関係法令やFERIガイドライン(※2)に適合しているか事前に審査されます。審査に合格した求人票には、認証の証としてロゴが付与されます。

(2)労働者へのモニタリング・救済・公益通報機能

JP-MIRAIは、リクルートから日本での就労までの全プロセスにおいて、移住労働者にアプリを配布し、定期的な質問への回答やインタビューの実施をサポートします。また、母国語対応の無料相談窓口や救済メカニズムへのアクセスを提供します。

万が一、ガイドライン違反が確認された場合は、調査を行い、是正勧告や除名などの対応を実施します。重大な法令違反が発覚した場合は、送出国または日本の関係当局へ公益通報を行うことがあります。

(3)「FERI」「準FERI」の認定(確認)と表彰

国際基準に基づき、外国人労働者の来日にかかる費用の100%を雇用主が負担する「FERI」、費用の50%以上を負担する「準FERI」の2つの基準を設けます。移住労働者が日本に入国した後、モニタリングを実施し、その結果に基づいて求人票ごとに「FERI認定証」または「準FERI確認証」を発行します。年間の「FERI認定」、「準FERI確認」の数に応じて、優良使用者認定(表彰)を行うとともに、公表します。

>>登録・研修を受けた企業・送出し機関・監理団体一覧(準備中)

企業がFERIに取り組むメリット

国際社会においては、「ビジネスと人権」の観点から、企業には 人権方針の策定、人権デューデリジェンスの実施、救済メカニズムの構築 が求められています。こうした情勢の変化のなかで、「人的資本経営」の重要性がますます高まっています。ですので、FERIは外国人労働者の採用をお考えの全ての企業のみなさまに積極的に参加していただきたい仕組みです。しかし、「手間やコストがかかる」「費用を負担するのは難しい」といった課題を抱える企業も少なくありません。

一方、FERIでは関係各所が共同で取り組むことで、問題のある斡旋企業を排除し、間接コストの削減を目指すことができます。さらに、「ゼロフィー(求職者からの手数料を徴収しない)」に取り組むことで、優秀な人材の確保や離職率の低下などの成功事例も報告されています。

(※1)FERIのこれまでの取組み

(※2)FERIガイドライン

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